お電話でのお問い合わせはこちらからどうぞ

改正相続法の解説 寄与分に関して

平成30年7月13日改正相続法公布

平成30年7月13日、改正相続法が公布されました。前回に引き続き、改正相続法について解説します。
改正について詳しくはこちらをご覧ください。

今回は法改正でかなり変化した寄与分に関して解説します。

「寄与分」とはなにか

相続人にどのような割合で遺産を割り当てるかは「相続分」が規定しています。

相続分とは何か | 京都の相続・遺言
『京都の相続・遺言』内の『相続の基礎これだけは』では相続の基礎知識とその手続きについて解説しています。その中の「相続分とは何か」ページです

ただ、この相続分通りに遺産分割を行うことは不公平である場合があります。
被相続人の財産が残ったことに対して貢献した人がいる場合、その人と他の相続人を同様に扱うことはフェアとは言えない場合が存在するということです。

そこで被相続人の生前に、その財産の増加や維持に貢献した相続人は、法定相続分よりも多くの財産をもらうことができる制度があります。それが寄与分の制度です。

法第904条の2 共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、第900条から第902条までの規定により算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする。

寄与分及び特別受益 | 京都の相続・遺言
『京都の相続・遺言』内の『相続の基礎これだけは』では相続の基礎知識とその手続きについて解説しています。その中の「寄与分及び特別受益」ページです

この寄与分の制度によって、貢献度による相続分の不公平の是正がある程度なされていたわけですが、しかし寄与分の制度についても問題点が指摘されていました。

介護をしても被相続人の子の配偶者は相続人とならない

寄与分の問題点とされているのは対象者を「相続人」に限っていることです。

現実に多く見られるのが相続人の配偶者(子の妻など)が相続人の両親を介護しているケースですが、この場合、義理の父母と養子縁組でもしていない限り、被相続人の子ではないので相続権はありませんし、当然のことながら対象者を「相続人」に限っている寄与分の請求もできません

実務ではこのような相続人以外の貢献が見られる場合、介護を行っていた者の配偶者である相続人の貢献的に評価して、相続分として反映させるなどのことが行われてきました。ただ、このやり方にも限界があります。

このやり方は夫婦関係が円満で、一方の財産増加をもう一方の利益と考えられる状況でないと機能しないのです。

離婚、死別のときどうなるか

もしも被相続人が死亡したときに相続人と離婚していた場合、介護をした者は苦労に見合う利益を一切受けることができない可能性が非常に高くなります。

遺産分割協議で離婚配偶者の寄与分を認めさせ、離婚時の財産分与等に反映させる…ということも、まったく考えられなくはないでしょうが、現実的には難しいと思われます。

また、推定相続人であった配偶者が両親より先に亡くなっていた場合、子供がいれば代襲相続し、配偶者の相続分という形で利益を受けることができる可能性がありますが、子供がない場合は相続権も代襲相続権もない配偶者は一切何も得られません。

「寄与分」の範囲を変更する条文追加

このように、相続人以外に寄与分を一切認めないことは介護等の現実から乖離しており、高齢化の益々の進展もあり問題とされていました。そこで今回の改正では以下の条文が追加されることになりました。

改正法1050条第1項 被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族(相続人、相続の放棄をした者及び第八百九十一条の規定に該当し又は廃除によってその相続権を失った者を除く。以下この条において「特別寄与者」という。)は、相続の開始後、相続人に対し、特別寄与者の寄与に応じた額の金銭(以下この条において「特別寄与料」という。)の支払を請求することができる。

この条文追加で、相続人以外の「親族」が被相続人に対する療養看護その他の労務の提供により寄与した場合には、相続人に対して金銭請求をすることができることになりました。

寄与した親族のことを「特別寄与者」、相続人に対して請求する寄与に応じた額の金銭を「特別寄与料」といいます。

「親族」の範囲と注意点

相続人への金銭請求権が認められる相続人以外の親族は以下の通りです

  • 被相続人の6親等以内の血族き
  • 被相続人の3親等以内の血族の配偶者等
  • 相続放棄した人、相続欠格や相続廃除で相続権を失った相続人は除く

上記範囲でかつ相続人でなければ相続人への金銭請求権が認められます。

ただ、上記範囲の親族以外は以前と変わりなく、いくら貢献があっても何も請求できません(例えばご近所で親身に面倒を見てくれていた人など。結構世の中にはあります)。
また、婚姻関係についても内縁や事実婚による関係では認めていません。

特別寄与料の請求を求めることはできますが、相続人ではありませんので遺産分割協議に参加することはできません。

今回の法改正についてはこれからの高齢化社会に合わせた相続制度の見直しを主眼としていると言われていますが、この寄与分の条文追加はまさにそのポイントをおさえるためのものでしょう。

「寄与分(特別寄与料)」の相続人への請求方法

特別寄与料の請求は、遺産を相続した相続人に直接申し出ることになります。

特別寄与料は相続人たちと当事者間で協議して決めることになります。ただし、遺産総額から遺言で行った贈与を差し引いた金額を超えることはできません。

当事者間で協議がまとまらなかった場合や協議ができなかった場合は、家庭裁判所で審判を受けることになります。家庭裁判所の審判は、相続人でない親族が被相続人の死亡を知ってから6か月以内、または被相続人の死亡を知らない場合でも被相続人の死亡から1年以内に申し立てる必要があります。

特別寄与料は、被相続人に対する寄与の時期、方法、程度や遺産の額などの一切の事情を考慮して定めることとされていますが、これ以外に具体的な決まりはありません。
現状、金銭請求権が認められたといえるだけで具体的に特別寄与料がどの程度もらえるかはまだ不透明といえるでしょうが、まずは請求権が認められたことだけでも前進ととらえるべきでしょう。

コメント