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改正相続法の解説 遺留分制度に関して

平成30年7月13日改正相続法公布

平成30年7月13日、改正相続法が公布されました。前回に引き続き、改正相続法について解説します。
改正について詳しくはこちらをご覧ください。

改正までの遺留分制度は以下のページの通りでした。

遺留分について | 京都の相続・遺言
『京都の相続・遺言』内の『相続の基礎これだけは』では相続の基礎知識とその手続きについて解説しています。その中の「遺留分について」のページです

今回の遺留分制度に関する改正は、主に上記ページの下の方に記載されている遺留分減殺請求についてのものです。
それでは今回の改正でいままでの遺留分制度(主に遺留分減殺請求)がどう変わるのか見ていきましょう。

今までの遺留分制度(遺留分減殺請求)制度は

遺留分減殺請求について、改正前は下記の様に規定されていました。

民法第1031条 遺留分権利者及びその承継人は、遺留分を保全するのに必要な限度で、遺贈及び前条に規定する贈与の減殺を請求することができる。

このように、とてもシンプル(としか言いようがない)な規定です。
「あれ?どうやって権利行使して、行使したらどうなるの?」という疑問が(当然に)湧くかもしれません。
このシンプルな条文に判例や実務の積み重ねで肉付けをしてきたのが改正前までの運用です。

まず遺留分減殺請求の行使についてですが、別に裁判を起こしたりする必要はありません
単純に相手に行使することを口頭で伝えるだけでも行使したことになります。

とはいっても現実には口頭で伝えるだけ、ということはありえず、実際のところは内容証明郵便で遺留分減殺請求の意思を相手に伝える(ちゃんと行使の証拠を残す)、といったところです。

そして行使するとどうなるかというと、最高裁はこう言っています。

「遺留分権利者の減殺請求により贈与又は遺贈は遺留分を侵害する限度において失効し、受贈者又は受遺者が取得した権利は右の限度で当然に減殺請求をした遺留分権利者に帰属するものと解するのが相当」 最判昭和51年8月30日

これはどういうことかというと、遺留分権利者が「遺留分減殺請求するぞ!」といったらその瞬間に遺留分に相当する部分は遺贈や贈与が無効になって遺留分権利者のものになっている、ということです。

これが意味することは、遺贈や贈与が特定の物(不動産を含む)だった場合、その財産は受遺者または受贈者と遺留分権利者の共有という後述のようにとても厄介な状態になってしまうということです。

この結論の何が問題だったか

相続財産中共有となりえる大きな財産と言えば不動産と株式が思いうかびますが、まず株式が共有となったことにより承継した事業の経営に支障が生じる可能性が出てきたりしますし、不動産の共有状態は不動産の使用収益をめぐって問題が起きる可能性が高くなります。

いずれにせよ生じてしまった共有関係を解消する努力が必要になることがほとんどですが、共有関係を解消するための交渉が、新たな紛争の種になることが多かったのです。

実のところこの制度については行使する側にも使いやすいとは言えない部分がありました。
遺留分の割合が小さい場合、例えば不動産の5分の1などの登記をすることになり、手続きの費用がかかるだけで実際の利益はまったくない(不動産のわずかな持ち分を得たところで使い道がありませんし、まさしく嫌がらせ程度にしかならない場合が多い)ことが多かったのです。

「相手に買い取らせればよいのでは?」という意見もあるでしょうが、かなり迂遠(遠まわし)であることは否定できません。

改正後の遺留分制度(遺留分減殺請求)制度は

遺留分減殺請求について、改正後の規定はこうなっています。

改正民法第1046条
1.遺留分権利者及びその承継人は、受遺者(特定財産承継遺言により財産を承継し又は相続分の指定を受けた相続人を含む。以下この章において同じ。)又は受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる。

上記の通り、遺留分を侵害された権利者が遺贈や贈与を受けた者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の請求をすることができる(金銭債権を得る)制度に変更されました。

新しい遺留分制度のメリットは

遺留分減殺請求を行使したらすぐに相続財産の移転が起こり、結果として厄介な共有状態になる…という事態は避けられるようになりました。行使する側にとってもこの方がシンプルで扱いやすいと思われます。

また、その一方で特定の財産については特定の人物に承継させたいと考えていた被相続人の意思を尊重することもできるようになります。

金銭の準備ができない場合は

遺留分減殺請求が遺留分に相当する金銭債権となったことはわかりやすくて良いのですが、遺贈や贈与が特定の物である場合、受遺者の手元には支払いするための金銭が不足している場合も考えられます。

この場合、支払いをするためにせっかくの相続財産を手放す必要がある場合も考えられることになります。

そこで改正法では裁判所は受遺者または受贈者の請求により、金銭債務の全部または一部の支払につき、相当の期限を付与することができるものとしています。

とはいえいずれは金銭の支払いが必要であることには変わりありません。あらかじめ生命保険等を活用して支払資金を準備しておくことなどが考えられます。

遺留分の算定方法の見直し

遺留分制度に関するもう一つの改正が、遺留分の算定方法の見直しです。

今までの制度(条文プラス判例・実務)では、遺留分の計算上参入される、つまり遺留分減殺の対象となる生前贈与の範囲について、それが法定相続人に対するものか法定相続人以外に対するものかで取扱いが違っていました

どのような内容であったかというと、法定相続人以外に対する贈与は原則として相続開始前の1年間にされた贈与に限り遺留分減殺の対象となりますが、法定相続人に対する贈与のうち特別受益にあたるものは、特段の事情がない限り期間の制限なく何十年前の贈与でも遺留分算定の基礎となる財産に算入されます。

このように何十年前の贈与でも算入するというのは法定相続人以外の贈与を受けた人にとっては予期せぬことですし、また調査も大変です。

そこで今回の改正ではこの法定相続人に対する贈与について遺留分の対象財産となるのは、相続開始前10年間にされたものに限ることにされました。

今回の相続法改正の一つの重要なテーマは配偶者の保護ですが、今回説明した遺留分制度の改正については事業承継の便宜を図るためであるとみられているようです。
せっかく事業を承継する相続人に事業に関する財産を生前贈与しておいても、後から遺留分減殺請求を受けては困ったことになります(株式を共有とされたり事業に使用する不動産が共有となったりする可能性)。

今回の改正で早め(10年以上前)に株式や事業用財産を贈与しておけば、遺留分減殺請求に悩む必要性はなくなるのではと考えられています。

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