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相続分なきことの証明(特別受益証明)について

相続分なきことの証明(特別受益証明)

不動産にせよ、金融資産にせよ、相続手続きを行う場合に作成する書類と言えば遺産分割協議書です。
しかし最近では大分少なくなったものの、不動産の相続登記の時に使用されている遺産分割協議書以外の書類があります。
それが相続分なきことの証明(特別受益証明)です。

遺産分割協議書についてはこちらをご確認ください。

遺産分割 | 京都の相続・遺言
『京都の相続・遺言』内の『相続の基礎これだけは』では相続の基礎知識とその手続きについて解説しています。その中の「遺産分割」のページです。遺産分割協議書や指定分割、協議分割などについて知りたい方は是非ご覧下さい

相続分なきことの証明(特別受益証明)とは

簡単な例を挙げると以下のような内容の書類です

私は、(生計の資本として、など)、被相続人からすでに相続分以上の財産の贈与を受けており、被相続人の死亡による相続については、相続する相続分がないことを証明します。

作成年月日

作成者氏名住所 ㊞

どうでしょう、遺産分割協議書と比べると、かなり簡単な書類であることがわかると思います。

内容は「私は被相続人(亡くなった人)が生存している間に相続分に相当するよりもたくさん財産を貰っているからもう相続分として貰うものはないですよ」ということを提出する役所に証明するものです。

この書類に作成者が署名押印して作成者の印鑑証明書を添付し、遺産分割協議書の代わりに法務局に提出して相続登記を行うことになります。
相続人が2人しかいない場合ですと、1人がこの書類を作成すれば遺産分割協議書なしでも相続登記ができる(もちろん戸籍等の他の必要書類も必要ですが)ということになります。

「遺産分割協議書を作るのより簡単そうだし、こっちでいいんじゃない?」というように思われる方もおられるかもしれません。

それではもう少しこの書類の中身について説明していきます。

「特別受益の証明」とはどういうことなのか

まず、特別受益がどういうものかについてはこちらをご確認ください。

寄与分及び特別受益 | 京都の相続・遺言
『京都の相続・遺言』内の『相続の基礎これだけは』では相続の基礎知識とその手続きについて解説しています。その中の「寄与分及び特別受益」ページです

上記の「私は被相続人(亡くなった人)が生存している間に相続分に相当するよりもたくさん財産を貰っている」という記載部分は「私は特別受益者ですよ」と言っているのであり、それを役所に証明しているというわけです。
だから特別受益証明書といわれるのです。

ここでこういう疑問を持つ方が多いと思います。
「あれ?じゃあ特別受益者って生前贈与とかを貰ってた人のことなんだよね?じゃあ何も貰ってない人がこの書類を作るのはおかしいんじゃないの?」という至極当然の疑問です。

相続分なきことの証明(特別受益証明)の問題点

相続分なきことの証明(特別受益証明)の問題点の一つは上記の部分です。

相続分なきことの証明は遺産分割協議書を作るのが面倒、あるいは何らかの理由で遺産分割協議書を作成したくない場合などに利用されることが多いのですが、そういった場合、実際には特別受益を受けていない相続人が手続きを簡単にしたいなどの理由でこの書類を作成(他の相続人から送られてきたものに署名押印)することが多くみられます。

しかしこの書類は手続きが簡単に済む側にこそ利益がありますが、受けてもいない生前贈与を受けたという書類を作成した本人にはメリットの無い書類です。

仮によくわからずに他の相続人から送られてきたこの書類に署名押印してしまった場合、実際には相続意思があったり良く調べた結果相続したいと思う相続財産があった場合であっても、「相続分はない」としているこの書類の存在のために不利になる可能性があるのです。

このような本人の意思と異なる相続分なきことの証明書が存在する場合の裁判所の判例はいろいろありますが、虚偽に基づいて書類を作成したとしても無効で相続人は相続分を失うことはないとしたものもありますが、別の判断も存在します。いずれにせよ書類が存在することで作成者に良い点は一つもないといえるでしょう。

相続放棄との関係

相続分なきことの証明(特別受益証明)のもう一つの問題点は簡易の相続放棄であると誤信している人が多い点です。

現実によくあるのが他の相続人から「(相続)放棄してくれ」という連絡と共にこの書類が送られてきて、「自分には相続分はありません」という書類に署名押印したのだから「相続放棄」をした、と考えているパターンです。
被相続人に債務がある場合も含め、この書類を作ったことで自分は面倒な相続から解放された、と誤信してしまうのです。

「えっ?これで相続放棄できているんじゃないの?」 と思われた方はここで確認をしておいてください。

民法第938条  相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。

民法という法律で上記のように規定さえています。
つまり、相続放棄は必ず家庭裁判所で手続きしなければならないのです。

ここで最初の方の説明を思い出してください。この書類は「私は被相続人が生存している間に相続分に相当するよりもたくさん財産を貰っている」ということを証明する書類であるとの説明でしたね。
つまりどこにも「相続を放棄する」とは書かれていないのです。

「相続分として貰うものはない」という部分は単にそれに相当する財産をもう貰っている(からこの不動産の権利はない)よと言っているにすぎず、家庭裁判所での手続以前にそもそも書類自体に相続放棄の記載もないわけです。

結果どうなるかと言えば相続放棄ではありませんのでもし被相続人に負債があれば、それについては相続分通りに支払う必要が出てきます。それに対し、プラスの財産は「相続分として貰うものはない」という書類を作成しています
ので貰うことができず、最悪の場合借金だけ相続する事態も考えられるのです。

最近はテレビ番組でもよく相続問題が取り上げられるようになり、この問題もたまに取り上げられることもあるのですが、まだまだ「事実上の相続放棄」とも言われるこの方法と本来の相続放棄の関係を誤解されている方が多いようです。

簡単に不動産の相続登記だけを行いたいときにはその簡便さにメリットも感じられる方法かもしれませんが、上記のような問題があることから当事務所ではこの書類を使用した方法はおすすめしていません。

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