2018年05月の記事一覧

遺言作成が望ましい場合 過去の事例より

以下の事例は当事務所が過去に相談を受けた事例に少し変更を加えたものになります。

ある日、依頼人であるAさんの夫であるBさんが亡くなりました。
お二人の間にお子様はなく、また遺言書についても作成されていませんでした。

Aさんは基本的に金銭の管理等は夫であるBさんにまかせきりで、通帳の場所なども知らないし、銀行のATMにも行ったことがないという方でした。また、当然相続がどうなるかということもご存じありませんでした。

実際のところ、この時点で相続手続きはやや複雑なものになることがわかります。この場合、相続人が兄弟姉妹ないし甥姪となる可能性が高い(一応相続順位としては直系尊属(被相続人のご両親等)の方が上ですが、年齢的に相続人となるケースは少ない)からです。

ここのところに誤解のある方が結構おられます。夫婦の間に子供がおられず夫婦の一方が亡くなった場合、全て配偶者が相続するものと誤解している方は結構多いのです。また、相続人が兄弟姉妹ないし甥姪となることを知っている方でも相続分が4分の1と比率が小さいことから大した問題ではないと誤解している方も多いようです。

しかし相続手続きにおいては相続分の大小に関わらず相続人の全員が手続きに参加する必要があるため、相続分としては数十分の1などであってもその方なしには手続きを進めることはできないのです。
このことから相続人の人数が増え、普段往来のない方が相続人の一人である場合がどれだけ手続きを難しくするかを理解していただけると思います。

さて本事例に戻りますが、Aさんは先述の通り金銭の管理等は夫であるBさんにまかせきりの方でしたので自己名義の預金等もあまりない方でした。そのため一刻も早くBさんの相続手続きを済ませ、預金をおろせるようにする必要がありました。
このように、不動産はすぐに売却する予定でもなければそれほど急ぐ必要がない場合が多いのに比べて預貯金については早く手続きができないと、残された相続人が困る事態がありうるのです。
そして事態を打開するには一刻も早く他の相続人と連絡を取り、「相続人全員で」手続きをする必要があるのです。

本事例をさらに難しくしたのはBさんはBさんのお父さんの再婚後の子供であり、お父さんの最初の結婚のときの子供、つまり母親の違う兄弟がいて、その母親の違う兄弟とは全くと言っていいほど往来がなく、どこにいるかも知らなかったことです。
そのためまずはその兄弟姉妹、ひいては会ったこともない甥・姪を探すところからスタートということになってしまったのです。

詳細は割愛しますが、他の相続人を探し、次にその現住所や連絡先を探し、相続について説明し・・・と手続きを行うのに結局数カ月の時間を必要とすることになりました。
おそらくAさんも「遺言さえ作成しておいてくれていれば…」と何度も思われたのではないでしょうか。

兄弟姉妹については遺留分という相続人に残す必要のある部分が存在しないため、配偶者に相続させる内容の遺言を作成しておけば問題の起きない事例であったといえます。また、被相続人であるBさんの意思としても存在すら知らない甥・姪に相続させる意思があったとはあまり考えられなかったため、尚更遺言を作成して残されたAさんに負担がかからないようにするほうが望ましかったといえるでしょう。

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