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諸外国では、一定期間の贈与や相続を累積して課税すること等により、資産の移転のタイミング等にかかわらず、税負担が一定となり、同時に意図的な税負担の回避も防止されるような工夫が講じられている。
今後、こうした諸外国の制度を参考にしつつ、相続税と贈与税をより一体的に捉えて課税する観点から、現行の相続時精算課税制度と暦年課税制度の在り方を見直すなど、格差の固定化の防止等に留意しつつ、資産移転の時期の選択に中立的な制度の構築に向けて、本格的な検討を進める。
令和3年度税制改正大綱 今後の税制改正にあたっての基本的な考え方より
現在の贈与税と相続税については相続時精算課税制度か暦年課税制度の二つが制度の柱となっています。
ただし実際のところ、相続時精算課税制度を利用した方が節税のメリットがある場合は限られるので、多くの方は暦年課税制度の110万円枠を中心に利用して贈与を行い相続税の対策をするのが中心…という説明をしたのが前回でした。
そんな中でのこの税制大綱はかなりのインパクトがありました。
暦年課税制度で贈与された財産がすべて相続税の計算に入らないというわけではありません。
相続開始前3年以内の贈与については暦年課税制度で贈与されたものであっても相続財産に加算されます。
現在の贈与税と相続税についての対応は間違いなく相続時精算課税制度よりも暦年課税制度の方が利用されているといえます。
これは110万円の非課税枠はもちろん非課税である110万円をある程度超過しても相続税よりは贈与税の方が安くつく場合が多いことが理由です。
贈与税の税率を見るとかなり高く思えるのですが、110万円を超えた分にしかかかりませんし、300万円以下からは別に控除も入ります。
例えば300万円を贈与したとして、実際の贈与税は19万円で、負担率は6.3%ほどになるのです。相続税の方が高い場合もあるというのに納得していただけるのではないでしょうか。
その暦年課税制度が廃止されるとなると、節税手段を大きく変えざるを得なくなります。
それではなぜ暦年課税制度の見直しが行われるのでしょうか。
最初に引用した税制大綱から贈与税の暦年課税が富裕層の相続税節税に想定以上に利用されて格差の拡大につながっていることに対する危機感が読み取れるといわれています。
諸外国と同様に相続税でも贈与税でも最終的に公平な負担になるような税制にすべき…というわけです。
それでは暦年課税制度の見直しが進むとして、どのようなものになるのでしょうか。
見直しの方向性としては、暦年課税制度を廃止して相続時精算課税制度のみを残す方法、そしてもう一つは暦年課税制度を存続させるものの実際の内容としては相続税に近づける方法の二つが考えられますが、現在の制度利用状況や国民の意識から暦年課税制度の廃止は国民への影響が大きすぎるからおそらく選択されることはないだろうというのが税務の専門家の見方なようです。
暦年課税制度を相続税に近づける、具体的には現在暦年課税の相続税への算入は相続から3年以内の贈与ですが、これを10年以内あるいは15年以内などに拡大するという案が有力視されています。
現在の日本の制度に比べると大綱が参考にするとしている諸外国ではより長い期間の贈与を相続時の課税対象としており、イギリスは死亡前以前7年間、フランスは15年間、アメリカはそもそも生前贈与すべてに相続税を課しているとのことです。
今検討中の税制改正ではこういった諸外国の制度を参考に贈与を相続に算入する期間を長くすることによって、実質相続税と贈与税を一体化する方向で議論する可能性が高いといわれており、フランスと同じ15年にすることが有力とみられています。
ではいつごろに見直しがなされるのかというと、まだなんとも言えないようです。
早ければ2022年に税制改正され、そこから1年?3年後には改正スタートというシナリオもありえるとの見方もあるようですが、かなり反発も多そうなのでもっと時間がかかるとの見方もありますし、見直しが決定されるとしても経過措置を設けて一定期間を経て実施されると予想されます。
ただ、相続税の節税を考える場合は時期を早めることを検討したほうがよさそう、ということについては一致した見解が多いようですね。
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