遺言の方式には本編で説明した自筆証書、公正証書、秘密証書の3種類のほかに、特別方式の遺言というものがあります。
めったに利用されることのないものなので本編では省略しましたが、ここで簡単に説明しておきたいと思います。
特別方式の遺言には、危急時遺言と隔絶地遺言があります。危急時遺言には、死亡危急時遺言、難船危急時遺言があり、隔絶地遺言には伝染病隔離者遺言、在船時遺言があります。
これら特別方式の遺言は、普通方式による遺言が困難な場合において特別に認められた簡易な方式であるため、遺言者が緊急事態を脱し、普通方式での遺言を作成できるようになったときから6ヶ月間生存していた場合、効力を失います。
危急時遺言
死亡危急時遺言
疾病その他の事由によって死亡の危急に迫っている者が遺言をしようとするときは、証人として3人以上の立ち会いがあれば、その1人に遺言の趣旨を口授して遺言をすることができます。
この場合、口授を受けたものが筆記して遺言者と他の証人に読み聞かせ、または閲覧させ、各証人が筆記の正確なことを承認した後で、署名・押印します。
難船危急時遺言
船舶遭難の場合に船舶中で死亡の危急に迫った者は、証人として2人以上の立ち会いがあれば、口頭で遺言をすることができます。
死亡危急時遺言と違い、証人による遺言の趣旨の筆記は遺言者の面前などで行う必要は無く、読み聞かせも必要ではありません。
隔絶地遺言
伝染病隔離者遺言
伝染病のために隔離された者は、証人として警察官1人及び1人以上の立ち会いがあれば遺言書を作ることができます。
在船時遺言
船舶中に在る者は、船長又は事務員1人および証人2人以上の立ち会いがあれば、遺言書を作ることができます。
特別方式の遺言は上記の通りです。
