遺言と異なる内容の遺産分割が行われた場合については民法には規定されていません。
ですからそれが可能かどうか、また効力はどうなのかは判例によることになります。
遺言と異なる内容の遺産分割の効力についての判例は、平成6年の東京地裁の判決があります。
この裁判は、特定の一部の相続人が遺贈を受けていたが(一部の相続人というところがポイントです)、それと異なる内容の遺産分割協議を成立させたというものでした。
この裁判で裁判所は、「~遺贈を受けた相続人が右遺言の内容を知りながらこれと異なる遺産分割協議をした場合には、右遺産分割協議は右遺言に優先するものというべきである。~特段の事情のない限り遺贈の全部又は一部を放棄したと認めるのが相当であるからである。」としています。
この判例から、遺贈を受けた相続人が遺言の内容を知りながら内容の異なる遺産分割協議を行った場合、遺産分割協議が遺言に優先することになり、遺産分割協議は有効なものとして成立する、と解されています。
ただし上記判決がどんな場合でも遺産分割協議が成立すれば常に遺言に優先する、としたわけではありませんので、他の場合についても考察する必要があります。
まず相続人ではなく、相続人でないものに遺贈がなされた場合ですが、相続人でない受遺者に遺産分割を主張することはできませんし、遺贈が包括遺贈の場合は受遺者の参加していない遺産分割協議はそもそも無効です。
特定遺贈の場合、被相続人死亡と同時に所有権は受遺者に移転していますので、遺産分割の効力を主張することはできません。
したがって受遺者が相続人以外である場合、遺言と異なる遺産分割協議を行っても効力は生じないことになります。
次に特定の財産を「相続させる」という遺言がある場合です。
「相続させる」という遺言については、遺産分割の方法を指定したものだと解するとされており、何らの行為も必要とせずに直ちに指定された相続人に遺産が承継されるものと解釈されています。
この「相続させる」という遺言があり、遺言執行者が指定されていた事案についても判例があり、そこで示された内容は、遺産分割協議は遺言によって取得した取得分を相続人間で贈与ないし交換しているもので、その合意は私的自治の原則に照らして有効、とするものでした。
つまりこの場合でも、遺言と異なる遺産分割を行うことはでき、有効であるということです。
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